理想を抱くある若い新人銀行員の物語。
折り畳み携帯が主流だった2002年。
ある世間知らずの大学生は、
人生初めての確定申告に試みます。
若さゆえ、いかがわしいアルバイで稼いだ、
なけなしの20,000円を握りしめ、
数件の税理士事務所へ電話をしたのでした。
「学生さんは対象ではありません。」
「個別相談は実施していません。」
「20,000円では行いません。」
「専門家はそれなりのお金がかかります。」
税理士に割と軽々あしらわれた事にマジ大泣きをし、
現実の経済社会を痛感したのです。
そして若者は悔しさあまり、ある決意をしたのです。
自分自身が税理士になればいいです。。
4大メガバンクの合併が突然発表された翌年2005年。
若者は税理士試験と両立し、
銀行員生活をスタートさせました。
他者の誘導や循環に達成感なし
入社後、半年間の内勤を経て営業がスタート。
しかし、ネガティブな若者は、当然営業ができません。
支店長からは毎日罵倒され、
遂には精神的に追い込まれます。
そして対外的に見栄えが悪いため、
予定調和の融資の実績を、
無理やり付加される事となったのです。
また、誘導的に指導された実績や、
単なる循環的な実績が頻発しました。
実績=自身の査定に関わる為、どんな過程であっても、
結果がOKと喜ぶ営業さんは数多くいました。
しかし、若者は、第3者から添加されたものが、
特段嬉しいと思う人種ではありませんでした。
そんな形であれ、成績あってこそ営業職。
その感覚が無い若者は、営業職として致命的な欠陥でした。
若者はレールに沿った方法により、金額が多額となる、
いわゆる箱もの物件を数件実行しました。
また、循環してきた事業性融資や、
自分でなくても良かった設備融資をコツコツ実行しました。
しかし、他人からの評価が多少良好になっても、
何も嬉しくなく、達成感すらありませんでした。
結局最も達成感があったのは、金額が僅少であっても、
自分で考えて獲得した当座貸越でした。
結局のところ、欲しい成績は、
自分で考えた方法で掴まないと、
最善ではなかったのです。
まわりと一緒に、「さーんはい!」と微笑しても、
冷静に俯瞰している自分を、後々で後悔するだけです。
理想をかなえる為にチャレンジ
たかだか入社1年、2年の銀行員である若者にも、
それなりの信念がありました。
金融機関の営業が、
何の経済活動のプラスにもならない、
金利の引き下げ競争に走ってはいけない。
投資や保険商品などの手数料収入よりも、
顧客の預貯金を大切にすること。
融資の借り換えは悪いことではない。
資本主義経済では当然の成り行きだ。
通常抱く事が多い理想には2種類あると言われます。
1つは仕事に対する信念と、
また仕事の仕方や取り組み方です。
若者はとりわけ、前者の方が色濃く表れていると、
しばしば目上の人間から注意を受けます。
なぜなら組織内では、理想とは会社が決定する事だからです。
理想はあくまでも理想であり、
上司や同僚さえ、理解を得られる事はありません。
「専門家はそれなりのお金がかかります。おととい来やがれ。」
その理想と現実を諭破するべく、
若者は銀行を退職し、
税理士事務所へ修行を積みに行きました。
事業者だけではなく、主婦(夫)でも学生でも、
誰もが気軽に直接税理士に相談できる社会になればいい。
そう思った2007年4月15日は、
僕が最後の融資決済の承認を得た日でした。
まとめ
今日は少し前に質問があった、
仕事に対する思いを教えてください。
という抽象的な問い合わせについて、
物語で表現してみました。
例え薄利多売となっても、
価格設定が低いだのどうこう言われても、
僕の理想は当時と変わる事はありません。